雷雨について 1
6月も終わりになると夏らしさが増す…というか、最近めっきりクソ暑くなってしまいましたね
湿度が高くてまとわりつくような暑さ…天気予報ではかなりの頻度で、「大気の状態が不安定」という言葉を聞きます。実際、わたくしも安定度が悪いな~と思ってます。
5月~6月にかけて、暑くなるに従って大気の状態不安定による「雷雨の可能性」を、これまで何度となく指摘してきたのですが、結局、東京で雷が観測されたのは、今年はまだ1回きりです
なかなかどーして…
雷雨の予報は、広範囲についての可能性に言及することはできるのですが、現象自体は局地性の強いもので、場所や時間を特定する予報はまだ難しいです。
<雷が鳴るような雲>
雷雲は「対流性の雲」と言って、鉛直方向にモクモクと成長するような雲が雷の発生に向いています。
というのも、雲の中で雲粒(氷の粒)同士がぶつかり合うことで雲が電気を帯びてくる、つまり上昇流が非常に強く、氷の雲粒ができるほど背が高くならなければ、雷はなかなか起こりません。
基本になるのは、強い上昇気流です。
強い上昇気流の原因
①地形による強制上昇
空気が山の斜面にぶち当たり、強制的に上昇させられることで強い上昇気流が起こったりします。
②気流の収束
下層の風が、ある所に集まってきているような状況を収束と言います。
収束が起こっている場所では、行き場を無くした空気は上昇するしかないため、結果的にそこで上昇気流が発生します。
③別の空気の塊による持ち上げ
ちょっと特殊な言い回しですが、要するに寒冷前線で起こっている現象。
寒冷前線は、冷たい空気の塊が暖かい空気を押してくるときに、その境目で形成される前線です。
そのため前線近傍では、冷たい空気が暖気の下にもぐりこみ、
押しのけられた暖気が強い上昇気流となるのです。
こんな湿った空気が上昇気流に乗っかってしまった日にゃ…雲がぐんぐん発達し、やがて雷が発生してしまうのもムリないです
そんな風にして、十分発達した雲を積乱雲と言います。いわゆる入道雲ってヤツです。「ゲリラ豪雨」と巷で呼ばれている強雨は、大体この積乱雲のシワザです
<積乱雲の正体>
夏の空でよく目にする「積乱雲」は、とてもでっかい一つの雲の塊のように見えます。が、実際は積乱雲1個で現れることはありません。
つまり一個の大きな塊に見えても、中身は複数の積乱雲が集合して存在しているんですね
このビミョーな図は、積乱雲の成長過程を示した手書きの画です。
A:発達期(積雲)
矢印で示したように、雲の中は全て上昇気流でまさに元気に発達中。
黒丸が降水粒子で、強い上昇気流に支えられて落っこちてくることができない状態です。
B:成熟期(雄大積雲)
積乱雲の手前で、まだ発達中。この頃になると、上昇気流で支えられなくなるほど大きく成長した雲粒が、落っこちてきます。白丸とバツ印は、氷粒子。雲の高さはかなり高くなっているということです。
C:衰退期(積乱雲)
雲頂が対流圏の天井に達して、もう鉛直方向には成長できず水平方向になびくようになります。そして、この頃には雲の中が全て下降気流となってしまい、後は衰退していく一方です。
これが、積乱雲1個の一生積乱雲1個、大きさ約10kmぐらい、寿命は1時間程度です。しかし、普段お見かけするゲリラ豪雨はもっと規模がデカくて、衰退するどころかかなり元気なまま埼玉県北部から東京・千葉あたりまで南下してくる事が多々ありますね。
実は、雲の塊の中身は複数の積乱雲の集合体で、組織化されている場合が多いからなのです
それを、マルチセル型雷雨とか言ったりします。
ちょっとカッコ良いネーミングじゃないですか?
<マルチセル型雷雨>
またまたビミョーな画ですが、マルチセル型雷雨の仕組みです。
雲の形で括ったのが見た目の雷雲(ストーム)で、その中身を見てみると、発達段階の異なる積乱雲(丸①~⑤)が、規則的に並んでいることを表しています。これが、マルチセル型雷雨の特徴の一つです。
通常、雷雲は雲のある高さの風(おおむね中層の風)に流され移動していきます。つまり上の図で言えば、西風にのって東進するハズ。しかし、この雷雲を追っていくと、緑の矢印の方向(南東)へ進んでいる…ように見えるのです
そこには、どんなカラクリがあるのでしょうか?
<中層の風とストームの動きのズレ>
5月22日に書きましたブログ「前線通過に伴って…」で、一度紹介しましたが…実は、発達した対流雲の下では、雲粒の摩擦によって引きずりおろされた冷気や、雨からの蒸発によって、冷たい空気が溜まっており、それが地表面付近で吹き出しています。(冷気外出流)
積乱雲(親雲)の下から吹き出した冷気は、下層の風とぶつかり収束します。
すると、そこで上昇気流が発生し新たな雲ができるという仕組み
親雲から子雲が生まれるような…そのため、この仕組みを世代交代と言ったりします。
上の図で、赤い矢印が下層の風です。つまり、下層の風がストームに向かって吹き込んでくる所で、新しい雲ができるのです。
マルチセル型雷雨の中身は…
1個1個の積乱雲が発達→成熟→衰退という過程を辿り、中層の風に流され東進している。
しかし、下層の風が南から入ってくるために、ストームの一番南側に新しい雲ができることで世代交代が行われる。結果として、ストーム全体は南東方向に動いているように見えるというカラクリなのです。
例えば、北関東に雷雲が見えた時…
上空の風が西風だから、東京は大丈夫だね~。
なんて安心してられないということです
次回は、実際起こった気が抜けない事例を紹介しますね~
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担当:o.nakamura