第46回気象予報士試験 実技2 の解説
「第46回気象予報士試験 実技2」の解説を始めたいと思います。
今回も実技1のときと同じように、大きく3つに分けて勉強していきたいと思います。
1本でやると長くなってしまいますので、まずは実況の把握の部分、そして2つ目が予想図を見ていくところですね。
3つ目はその予想を踏まえて実際はどういうことが起こったのかというような感じで、大きく3つに分けまして勉強していくという流れでいきたいと思います。
まず早速、実況の天気図から見ていきたいんですね。今回取り上げられたのは1月25日の事例ということで、真冬の事例です。「私が主役です」みたいな前線を伴った低気圧が北海道の西のほうの海上にありますね。中心気圧は990hPa、そしてSW、海上暴風警報が出ています。確かに日本海の等圧線の分布を見ていただきますとめちゃくちゃ等圧線が混んでますね。寒冷前線の後ろで寒気移流がなんか強そう。すごい冬型になっていそうな気がしますね。あと前線を見ていただきますと、寒冷前線、温暖前線と中心付近は閉塞前線が現れています。低気圧の発達の段階としてはもう閉塞の過程に入っておりまして、今まさに全盛期。低気圧の発達の段階としては最盛期を迎えているという低気圧の状態というわけですね。そしてこれは予報円が付いてますね。低気圧の中心はこの後、東北東に進んでいくということになっているようです。この辺りの地上の天気図を踏まえて他の天気図を見ていきましょう。
2枚目、300hPaの天気図です。300hPaの天気図と言いますとやはりジェット気流の解析なんかを行いますね。パッと見こちらのほうに180ktって出てますからここにジェットがあるんでしょう。さらに北側にも強風軸があるということなんです。地上の低気圧の中心位置を今この星印でプロットしてみました。というのも、この低気圧に関連する強風軸はどれですかという話なんですよ。そう言われると、地上の天気図と300hPaを置いて並べてみてもいいんですけれども、やはりこうやって300hPaの図に地上の低気圧の中心位置をプロットするとより一層、上空の流れとの関連が分かりやすくなりますので、少々面倒くさいですけれども、こういうのをやっておくと間違いがないですね。
まさに今回は低気圧の中心から寒冷前線が伸びて、温暖前線が伸びているというその中心部分は閉塞してましたよね。閉塞前線になっていました。ということは閉塞点の上に大体強風軸というのが通っているというふうに見ることができますので、今ここは8400mの閉じた等高度線がありまして、ここが切離低気圧になっていますけれども、それの周りをグーッと流れている1本外側の8520m付近、この等高度線に沿って流れている風がどうやらこの低気圧に関連する強風軸のようだということが分かるわけですね。
ここでちょっと復習、「そんなの分かってるよ」という感じはあるかもしれませんが、こんなのをご用意いたしました。温帯低気圧のライフサイクルの模式図ということで、これは一般分野でやりますよね。例えば下層に南北の温度傾度の大きい前線帯がありました。そこに上空の気圧の谷が近付いてきます。上空の流れはこんな感じで等高度線に沿う形で流れています。そうしますと、こういうトラフが近付いてきますと下層の前線帯は波を打ち初めまして、こんなふうに弱いながら中心ができたりして温帯低気圧が発生するわけですね。発達の初期段階です。このときに地上の低気圧の中心と上空の低気圧の中心、気圧の谷の軸を結んでみますと、上空ほど西に傾いています。これはまさに低気圧が発達する場、発達しやすい形になっているということなんですよね。さらにこれはトラフが深まってくるわけなんですよ。ここの流れを見てみますと、これはこのトラフの後面、この辺りに乾燥した寒気があるわけです。これがこの等高度線に沿って吹く流れでワーッと南下してきます。南下してくることによってこの強風が吹いているラインもだんだんと南下してきてトラフが深まってきます。
この2段階目の図の等高度線を見るとトラフが深まってきました。何を隠そうこのトラフの後面の乾燥した寒気がグワーッと南下してきまして、この流れ自体が南下してきたわけなんですよね。南下してくることによってトラフが深まりまして、トラフが深まってさらに低気圧は低気圧を中心として寒冷前線、温暖前線の構造が明瞭になってくる。発達期、今発達真っ盛りということです。これからどんどん発達するよという状態ということですね。もちろん上空に向かって気圧の谷の軸は西傾しています。西のほうに傾いています。ところが、さらにこの乾燥した寒気がどんどん南下してきますと、次第にこの低気圧の中心の南側を回り込むように乾燥した空気が入り込むようになるわけですよね。そうなりますと、この強風の軸はどんどん南下して、次第にこの地上の低気圧の南側を通るようになります。これが発達の段階としては最盛期、一番の全盛期になるわけなんですね。
今日見ている事例のように、等高度線が切り離された形になっています。切離されて中心部分に寒気を取り込んだ状態で、流れとは孤立してこの辺りでグルグルしてしまう切離低気圧ができましたが、こういうふうになりますと、この低気圧の中心と地上の低気圧の中心を結ぶ軸はほぼ鉛直に立つような形で、軸が西傾するということはないわけですね。もう鉛直方向に立っていて、先ほど言ったようにグーッと南下してきた強風軸は低気圧の南側を通るようになり、その南側の強風軸の通っているところに閉塞点ができて、強風軸の北側は閉塞前線、強風軸の南側には寒冷前線、温暖前線が分布するようになる。これが温帯低気圧のライフサイクルの基本的な形ですね。
いつもこういう閉じた等高度線が現れてというような感じにはならないですよね。そんなに発達しない低気圧とかもありますし、あくまでも基本というだけですけれどもこんなふうになっているわけです。ですから今回の低気圧も閉塞の過程に入っていますから、300hPaで等高度線8520m辺りが強風軸になるということを考えると、強風軸の北側には低気圧の中心から伸びるのは閉塞前線、強風軸の南側、強風軸より低緯度側には寒冷前線と温暖前線が伸びているという分布になってくるわけですね。
もう1つ上空の状況を見たいんですよ。これは500hPaなので300hPaよりも少し下になりますけれども、高度・渦度解析図です。初期時刻は同じで実況なのですけれども、ここでも強風軸を見ることができます。何かと言うと、渦度0線というのが目安になりますよね。渦度0線を今バーッと引いてみました。そしてこちらに星印を付けましたけれども、これもまた地上の低気圧の中心位置を500hPaの天気図にプロットしたという形になります。そうすると、低気圧に対応する正渦度極大値はこのプラス240なのですけれども、流れとして正渦度移流はどうですか。今、渦度0線はこういうふうな走行になっているんですよ。この渦度ってどっちに移動しますかね?上空の流れからしますと北北西方向に行きそうじゃないですか。そうすると、一番初めに見ていただいた地上天気図に予報円が付いてましたよね。あの予報円によると、低気圧の中心はどうやら東北東進するということでしたけれども、この流れを見ると東に行く成分って本当にあるのだろうかという状況なんですね。「もしかしたら違うかもしれないな」とこの時点で気付くと、予想図を見ていくときにどれが低気圧の中心になるのかというのを間違えないで済みますからね。こういうふうにこの500hPaでも強風軸はどこなのかというのを見る必要がある、それも重要ということです。
さらにもう1つありましたね。850hPaの気温と風の解析図です。問題では確かこれは暖気位流域がどこかということだけだったのですけれども、これがそれ以上にぞわぞわするのは、これ850hPaなのに-30℃っていうものすごい強い寒気があるんですよ。500hPaじゃないですよ。500hPaで平地が雪になる目安とか言ってよく-50℃とかを見るじゃないですか。そのクラスのものが850hPaに高度にあるっていう恐ろしさ。しかもその強い寒気から吹き出す等温線の間隔の狭いこと。そして吹き出す寒気がすごいですね。きっとものすごい寒気流の雲になってるに違いないと思うわけですよ。
あともう1つ、850hPaの低気圧の中心を循環で見るとこの辺りなんですけど、この北側は結構暖気移流がしっかりしているんですよ。この辺りも予想図でも出てきますのでちょっと覚えておいてください。
では雲画像を見てみましょう。はあ、恐ろしい。可視画像だけちょっと出してみました。見てください、今ちょっと領域が分けてあるので全体像は見にくいかもしれませんが、このCとかEとかっていわゆる筋状の雲ですよね。筋状の雲のスタート地点、もう陸地を出たらすぐ始まってます。離岸距離が短いですね。いかに寒気が強いかということです。吹き出してくる寒気が強いから離岸距離が短くて、もう海に出たらすぐ雲みたいな状態なんですよ。しかもみっちりきれいに筋状の雲になってますね。あーすごい。寒気移流が強いからどういうふうに雲になっているのか、反映されているのかというのを見ていただきたくて可視画像だけ先に見ていただきました。
ただ、問題はこんなふうに領域を5つに分けてそれぞれに問いがあるわけです。でも、例えばBの雲域なんかは寒冷前線に伴う雲域でみなさん結構知ってらっしゃるところですし、CとかEも下層寒気移流の筋状の雲ですから、そうすると対流雲ですよね。Bも寒冷前線を伴う対流雲なのですけれども、背の高さとしてはC、Eは背の低い対流雲、Bは背の高い対流雲、これは赤外画像と併せて見ると分かります。
そういうところで、特に今日注目していきたいのは、領域Aと領域Dの雲域なんですね。まず領域Aですけれども、これは低気圧の中心付近です。なんか黒っぽく穴が空いたみたいになっていますよね。これは可視画像も赤外画像もそうなっていますけれども、これはちょうど低気圧の中心付近です。正確に言うとAの横ぐらいでしょうかね。この辺りになりますので、低気圧の中心から北側と、中心から南側で雲の分布が全然違う、結構コントラストが大きいわけなんですよ。まず北側は、可視画像も赤外画像も真っ白で濃密な雲域になっているということが分かります。一方で、低気圧の中心の南側は、可視画像も赤外画像も暗くて、雲がほとんどないか、もしくは下層雲、そんな状況なわけですよ。
なんでこんな分布になるのか、そもそもこの暗い所は何なのかと言うと、思い出していただきたいのはやはり閉塞の過程に入っているんですよね。もう閉塞しているということは、乾燥した空気が低気圧の中心付近にギューッと入ってきている。低気圧の中心の南側を回って中心付近まで乾燥した空気が入ってきている。そうなりますと、やはり低気圧の中心付近でなかなか雲ができない領域というのは出てくるわけですね。このような南北の分布になってきているというのが、閉塞の過程に低気圧が入っているということが分かる1つの見方ですよね。
もう1つ、Dの雲域なのですけれども、なんか筋状なんだけど走行がおかしくないですか。普通は下層風の走行に沿うわけなんですけど、ここはなんかこんな斜めの線になっているような気がしませんか。注目したいのはここなんですね。Dの雲域の南円の所が周りよりもちょっと発達した雲域になっているのが分かりますでしょうか。周りより少し背が高い積乱雲の所がこう帯状に分布しているんですよ。これがJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)ですね。JPCZを何度も何度もやったから覚えてるという方も多いと思いますけれども、大陸から寒気が吹き出してくるときに、この辺に結構高い山々がありまして、その高い山を迂回してくるばっかりに、こちらの風下側が気圧の谷になっちゃって、風がここに集まってきちゃうんですよね。なので収束線を築いてしまうわけです。収束線がここにできてしまって、収束した所でワーッと背高く対流が立ってしまってできるのがこのJPCZというところですね。
ですからJPCZに沿ってできる雲域って周りよりちょっと背が高いので、下層風は西北西の風が卓越していましたけれども、背が高いばかりにもう少し上の風で700hPa、3000mぐらいの風に流されるようになるんですよ。ですので西南西風、700hPaぐらいの風がそういう走行になっていたから、こんなふうに下層風に直行するような格好の筋状の雲になるわけですね。名前はさておき、こういうのを直行型の筋状雲というふうに言うんですね。だからJPCZとかが出てきたときにどういう雲の走行になるかなというのを注意して見ていくとまた見方がどんどん変わってくるかと思います。だからこれ1枚で何が分かるかと言うと、背が高く発達しているということも分かりますし、走行が違うということは下層風じゃない所の風で流されている、そういうふうなりになっているということですから、背が高いということが分かるし、あとは風向の鉛直方向の視野がある、しかも結構大きいということが分かるわけですね、雲画像だけでも。
ここまでが実況の把握ということになります。相変わらず実況の把握だけで結構なボリュームになってしまいますけれども、この後は予想図を見ていきたいと思います。
「eラーニングをすべての人に!」
株式会社キバンインターナショナル KiBAN INTERNATIONAL CO.,LTD.
Web : http://elearning.co.jp
E-mail : international@kiban.jp
担当:o.nakamura