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気象予報士試験第46回 実技1の解説 その1

 それでは第46回気象予報士試験の実技1から勉強していきましょう。実技1をまとめて解説しようとしますと結構長くなってしまいますので今回は3つに分けました。大きく実況を2つに分けてあとは予想というふうに分けましたので少しずつ勉強していただければと思います。あともう1つ、試験問題を見ていくのですけれども、問題に順じてというか、問題通りに進んでいく、問題の解答を解説するとかではなくて、基本的には出された天気図の解説をしていくということです。ですので、天気図の基本的な見方、天気図の中でもどういうところに注目していかなきゃいけないのかということを主に勉強していただければと思います。

 では早速、今回取り上げられた事例の地上天気図を見ていきましょう。10月12日9時だそうです。何の事例かと考える間もなくここに台風がありますので台風の事例なんでしょうね。また台風が出てきました。台風の中心が東シナ海にありまして北上をしているようですね。その台風の中心の北東側、九州の南から日本の南海上にダーッと前線が停滞しています。そしてさらにその北に目を向けますと、東北地方に中心を持つ高気圧がありまして、こいつはなかなか頑張ってますよね。結構張り切って広がってますけれどもね。

 これは10月中旬なのでもうそろそろ北日本なんかは特に大陸から冷たい空気がやってきたり、温かくなったり冷たい空気がやってきたりみたいなことを繰り返しつつ秋が深まってくる頃ですよね。タイミングが悪いことにこういう熱帯擾乱が日本付近に近付いてきているのに、北ではこんなふうに高気圧がドスンって頑張ってしまっているので、なんか見た感じ台風の北側、特にこの辺りで気圧傾度が南側に比べると少し混んでいませんか。そうするとなんかそういう問題が出ますでしょ。問題に出ますけれども、普通地上天気図を見るときというのはこの台風だけ見るのではなくて、もっと周りを広く見て、なんでこちら側で気圧傾度が大きくなっているんだろうとか、そういう原因を見つけながら広く見ていくというのがまず初めの作業ですね。ですのでちょっとこの辺のことが問われそうですね。北のほうが風強いのかなとか、そんなことが想像できるわけです。

 あとはこの天気図上に示されているこういうTWとかGW、これは全般海上警報ですね。この海上警報は定番で絶対に出ますし、間違いなく覚えていって試験に臨むというのが当たり前ですから、みんな「知ってるよ」という感じかもしれませんけれども、まずこの台風に対して海上台風警報TWというのが出ています。そして四国沖にもGW(GALE WARNING)、海上強風警報というのが出ています。そもそもこういう全般海上警報というのは、この台風のせいでここはすごく風が吹いてますよっていう、該当する気圧系のそばに書かれるんですね。だからTYPHOON WARNINGになっているんです。
 ところが、じゃあこのGALE WARNINGはどうなんだみたいな。これは前線の北側?高気圧の端?何ここっていう。つまり該当する気圧系が特に特定できないんですよ。だけどGALE WARNING級の風が吹く予想になっている、もしくは吹いているということですから、そうするとこの範囲でそういう風が吹きますよという領域を区切らなきゃいけないんですね。ということで書かれているのがこれなんですよ。この波線で囲まれた所にGALE WARNINGが出ているということなんです。

 なぜこれを言うかと言うと、この波線は天気図をよく見ている方はご存じだと思いますけれどもFOG WARNING、海上濃霧警報によく出ませんか。海上濃霧警報が出ている所ってこれがすごく広い範囲で書かれていたりして、ここは霧注意なんだというのが分かると思うのですけれども、特に霧域なんかというのは、1つの特定の擾乱に限らず広い範囲に広がりやすいですから、こういう波線の枠で囲まれて領域を示すことが多いんですよ。なのでFOG WARNINGにしか出ていないイメージかもしれませんけれども、GALE WARNINGとかも特に該当する気圧系がない場合は同じように波線の枠で囲って、ここの範囲ですよということを示します。

 その辺りは踏まえて学習として覚えていかなければならないことをまとめてみました。その前にもう1個あったね、850hPaの天気図も併せて見ていきましょう。これも実況ですからね。地上天気図で見ました台風の中心位置と850hPaのこのLは中心の位置はほとんど同じ所にありまして、たかだか850hPaぐらいですけれども、この高度までは鉛直方向の軸がしっかり立っていて台風の構造としてはしっかりしているんだなということが分かります。等高度線の形も円形できれいですもんね。あと風の分布を見ますと、この観測からすると低気圧の中心の東から北側に西側よりも強い風が吹いているように見えますね。特にこの台風の東側にあるこの観測、名瀬の観測ですけれども、80 ktの南東風が吹いています。m/sに直すと40m/sですね。なかなかの暴風でありますけれども、そんなふうな風の分布になっているんですね。

 あともう1つ、この等温線の形を見ていただきますと、ちょうど台風の所でぐりんと丸っこくなっていますけれども、ここに暖気核があるわけですが、暖気核を形成して台風の構造としてはしっかりしているということですね。なぜこれをなぞったかと言いますと、ここはちょうど前線じゃないですか。前線が停滞していた辺りになると思うのですけれども、つまりこれは850hPaの18度の等温線が停滞前線に対応する温度線ということになるわけですね。この辺りの湿り域は台風に伴う湿域ですけれども、こっちに帯状に伸びる湿域はやっぱりこの前線に対応する湿域というふうに見ることができます。この辺りがまずは実況ですね。

 そして、さっき少し先走ろうとしてしまいましたけれども、天気図に載っている情報賭して読めなければならない、知っておかなければならないというものをまとめてみました。こういう台風の付記情報が載っていましたよね。台風が今どんな感じなのかということがまとめてあるのですけれども、これは読めなければなりません。読めなければなりませんと言うほどの内容ではないんですけどね。簡単です。とても簡単な英語で書かれていますし、すぐ分かります。

 台風何号で、中心気圧が960hPaで、その下は中心の位置です。北緯27.9°、東経127.4°。PSN GOODというのは中心の位置の確度ですね、正確さです。それがGOODですので正確ですよということです。そしてその下、NNW 10KT、北北西10ktと書いてありますね。進行方向は北北西で10 ktで進んでいます。その下、NEAR CENTER、中心付近の最大風速が70 kt。そしてGUST、最大瞬間風速が100ノットですよと書いてあります。そしてその下、このOVER 50KT、OVER 30KTというのは暴風域と強風域のことを言っているわけです。まず暴風域ですね、50 kt以上の風が吹いている範囲はN-SEMICIRCLEと書いてあります。これは北側半円で150海里以内で50 kt以上の暴風が吹いていますよということを言っているんですね。それ以外の半円では120海里で暴風域になっています。その下のOVER 30KTというのは強風域ですね。強風域も同じように北半円で375海里、その他の半円では325海里以内で強風が吹いていますよということなんですね。これを踏まえて後々問題を出されちゃったわけなんですけれども。

 あともう1つ、ここはあえて赤で書きましたけれども、この確度も出たことがあるんですよ。覚えなきゃいけない項目の1つですね。台風の中心位置の確度、表記としてはGOODとFAIRとPOORというふうにあります。意味としては、GOODは正確、FAIRはほぼ正確、POORだと不確実ということになりまして、これはふわふわしたやつではなくて、ちゃんと推定精度が出ているわけですね。まずGOODだったら中心の位置のずれが20海里未満なんですよ。つまりkmに直すと大体37km未満なんですね。東京から八王子が40kmぐらいなんですよ。それよりも短いんですよ。東京から八王子ってそこそこあるなと思われるかもしれませんけれども、衛星から見てみてくださいよ。衛星から見たときに中心はここって指定するのにその位置ずれが東京-八王子間だったらすごく狭くないですか。GOODの場合はめちゃめちゃ精度がいいんですよ。そしてFAIRの場合はちょっとこれより精度が劣ります。20海里以上40海里未満です。でもそれでも40海里未満、約74km未満で収まっているんですよ。74kmになると東京から小田原ぐらいなんですけどね。また遠いなと思われるかもしれませんけれども、何度も言いますけど神様目線ですから。宇宙から見た場合ということですよ。それを考えたらすごく正確だと思うんですけどね。そしてPOORなんていうのはあまり見ないかもしれませんけれども、台風が発生したばかりのときでちょっと渦運動の中心が捉えにくいときなんかはたまにPOORになってたりすることがありますけれども、これで40海里以上となっています。ということで、この推定精度が出されたことがありますので、こちらも、別に八王子-東京間はどうでもいいんですけど、こういうふうにすごく正確だと決められているということを覚えておいてください。

 そしてもう1つ、これも知っておかなければならないので一応まとめました。「そんなの知っとる上でテストに臨んでるわい」と思われるかもしれませんけれども、まあまとめましたのでね。台風の大きさと強さですね。大きさも強さも共に風速で決められています。大きさは風速15m/s以上の半径、強風域の半径で決めているんですよね。大型と表記するのが半径500km以上、800km未満。超大型と言うと800km以上の半径になるわけです。それはどれぐらいかと言うと、気象庁のホームページに書いてあったんですけどこんなのですよ。大型すごくないですか。超大型なんて本州全部すっぽりですよね。そりゃ大型の中心が遠くにあるときも影響が出るわっていうぐらいの感覚です。これは感覚として覚えておくと便利ですね。ぜひ覚えておいてください。

 もう1つ、強さのほうですね。これは中心付近の最大風速で区切っています。強い台風と言われるのが33m/sから44m/s未満。ノットで言うと64kt以上85kt未満。非常に強い台風は44m/sから54m/s未満、ノットで言うと85ktから105kt未満ですね。猛烈な台風になりますとそれ以上ということになります。先ほども言いましたけれども、もうとっくに覚えてるという方もぜひ忘れないようにしてください。

 これを踏まえて、台風の大きさとか強さをのっけから問われる問題が確かありましたよね。空欄を埋めるところって結構サラサラと書けるところなんですけれども、そうすると強い台風なのか、非常に強いのか、猛烈な台風なのか。大きさで言うなら大型なのか、超大型なのかというのを選ばなければならない問題が出てきましたけれども、既にここにちゃんと書いてある。付記情報として強風域の半径はどれぐらいとか、中心付近の最大風速はどれぐらいって出ているから、先ほどの表がちゃんと頭に入っていればできますよね。

 まずこれが台風の大きさとしてどれぐらいなのか。強風域を考えますと、強風域がOVER 30KTですから30kt以上の強風が吹いている所ということで、北半円で375海里以内。じゃあ375海里ってkmに直すとどれぐらいなんだということになるわけです。これがちょっと面倒くさいなということかもしれませんね。1海里が1852m、1.85kmとかで計算できますから、普通に375×1.85を一生懸命やればいいんですね。一生懸命やると、計算した結果大体710kmになります。そうなるとこれは強風域の範囲として、500km以上800km未満の範囲に入りませんか。となると、この台風は大型の台風というふうにくくられるわけですよね。

 もう1つ、じゃあ強さはどうなのか。強さはすぐ分かりますね。先ほどの基準が分かっていれば、中心付近の最大風速が70ktですから、ということは64kt以上85kt未満の強い台風に属するということが分かります。従いましてこの台風は、大型で強い台風ということになるわけですね。

 括弧を埋めるのにいちいち計算問題が出てきますとなんかちょっと手こずったなという感じがありますけれども、慌てるなかれですね。kmから海里にするとか、海里からkmにするとか、ktからm/sにするとかっていうのは特に文系の人にとってはごちゃごちゃしてしまうところだと思いますけれども、この辺は試験のときにワーッて頭が白くならないようにもう作業としてパパパッとできるぐらい訓練をしておくといいかなと思います。実際私は何回もやって訓練しました。

 次なんですが、実は私のお気に入りと言いますか、「へえ、この問題面白い」と思ったのが次の問題なんですよ。次というのは問1(2)なんですけれども、アとかイとかウって3地点ありますよね。ここの想定される風速を答えなさいということなんですよ。風速なんて出てないのにどうやって答えるんだろうと一瞬思いますけれども、要は今まで一生懸命言ってきたことですよ。強風域なのか暴風域なのか、みたいなことなんですよね。特にアとかイは台風周辺の同心円の等圧線辺りに位置していますから、まずはこの地点が暴風域にあるのか、それとも強風域にあるのかというのを考えてみたいと思います。そのためには中心からアの地点まではどれぐらいの距離なのか、中心からイの地点まではどれぐらいの距離なのかというのをデバイダーを使うとかもしくは定規を使うなりして長さを測るんですよ。長さからどうやって距離にするのかと言うと、緯度10°、これが約1110kmということを目安にして計算するんですよ。計算ってまたなんか仰々しいことを言っちゃいましたけれども、この緯度10°分が一体何cmなのか、それが1110kmに相当するんだから、じゃあこれが何cmかというのを測ればここの距離が出るということなんです。

 お手元の天気図で距離を測ってみてください。デバイダーでもいいし、定規でもやってみてください。そうすると、私の物差しによりますと、中心からアまでの距離は1.5cmなんですよ。中心からイまでの距離は4mm、0.4cmなんですね。今言ったようにこれを距離に換算しようということなんです。そうすると、まず中心からアまでは大体370kmぐらい、400kmないぐらい離れた所に位置しています。イの地点は中心から99kmぐらい、100kmないぐらいの所に位置しているはずです。だからそれが強風域なのか暴風域なのかということです。

 まずちょっと遠い所にあるアですけれども、先ほどこの台風は大型の台風だということが判明しましたよね。つまり大型の台風ということは少なくとも500km以上は強風半径があるわけですよ。アは中心から400km以内にいるわけなので、間違いなく強風域には入っているんだなということが分かります。じゃあ暴風域はどうだろうということでここを考えてみるんですね。OVER 50KTと書いてあります。この暴風域の半径としては今は中心の北側ですから、北半円で150海里以内じゃないといけないわけですね。150海里って何kmかと言うと、これもまた一生懸命計算していただきますと大体280kmぐらいになります。それぐらいに入っていないと暴風域じゃないから、アは強風域だということになるわけですね。従いましてアは強風域のこの基準を書けばいいんです。30kt以上50kt未満の風が吹いていると想定されるということです。

 同様に、イは中心の南南西側に位置していますので、北半円ではないけれども、100km以内ですから暴風域ですよね。ですから暴風域の数字を言えばいいんです。暴風域は50kt以上と書いてありますよね。中心付近の最大風速も書いてあります。ですから50kt以上70kt未満・・・じゃないんですよね。70kt吹く可能性もあるわけです。ですから70kt以下というふう想定されるわけなんですね。ここはちょっと間違いポイントですね。

 もう1つ、なんかちょっと特別扱いしちゃいましたけれども、このGW、GALE WARNINGですよ。一番初めに言いました。この枠内がGALE WARNINGですよって言って、なんでこのポイントをウにしたのかなと言うと実はこれはGALE WARNINGの中に入っているんですね。「わー、これは面白い問題だ」と思って1人でテンション上げてたんですけどね。要するにこのGALE WARNING、海上強風警報の基準を答えればいいんですよ。34kt以上48kt未満というふうに答えることによって、ウで想定される風はこれですねということになるんですね。

 ここまでがまずひとくくりということですね。もう1つ実況を見て行きたいと思います。

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担当:o.nakamura