ミステリアスな梅雨前線
関東地方は、平年よりも12日早く梅雨入りした模様…
もう10日ぐらい経ちましたね
今のところ、なかなかの梅雨らしい梅雨。
どんよりした日が続いたり、中休みがあったりして…。
ところで「梅雨前線」は、なんかフツーに前線という言葉を使っちゃってますが、実はいわゆる前線のルールからは外れている、ちょっと異質なヤツなんです
<そもそも前線は…>
そもそも「前線」とは、密度が異なる空気の境界線天気図上では、気温が不連続な所(温度差が急激変化する所)
に表現されるべきものです。
例えば、こんな感じで…
前線は、気温の日変化や地表面の状態の影響を大きく受ける地上気温で調べるよりも、850hPaの温度場で見る方が検出しやすいんですね~
で、上の図が地上天気図で下の図が同日・同時刻の850hPaの天気図です。
破線で表現されているのが、850hPaの等温線で地上の前線との対応が分かりやすくなるように、赤い線で地上の前線を目安として描き込みました。
上の図のように、普通前線は等温線の間隔が狭い所、つまり、温度差が大きい不連続な所に引かれます。
描き方は、等温線の間隔が狭い所の一番暖気側の等値線に沿って引くルールになっていますよ。
(上の図の場合、15℃線に沿った所)
ところが
梅雨前線はそのルールをムシして引かれている部分が
あるのです。
四国沖ぐらいまでは、等温線が比較的混んでいる所の暖気側に前線が表現されていて、本来のルールにのっとって引かれているようです。
しかし、
九州から西の方、中国大陸までのびている前線は、もはや等温線は混んでいないし、暖気側に引くというルールもムシされてます
これは一体どういうことなのでしょうか?
上の図で、緑のパッチ部分は湿度80%以上の領域です。
つまり、中国大陸までのびる前線の正体は、水蒸気量の差だったのです。
このように
天気図上で「梅雨前線」として、一本の前線で表現されていても、
中身を詳しく見ればそう単純なもんではないのです
梅雨前線は空気の不連続な部分である事は確かです。
だけど、その「性質」は一本の前線の中でも、同種の不連続ではありません
通常の前線に種類分けされる温度の差が大きい部分。
そして、水蒸気量の差が大きい部分。
梅雨前線は、これら性格の異なる境界線が、横一線に連なっているものなのです。
「梅雨前線」という概念が導入されたのは1941年頃らしいです。
この水蒸気量の傾度を、どう表現するか?
これまで長年に渡り、多くの気象学者さんたちや予報官さんたちが、なんかウマイ方法はねーものかと、頭を悩ましてきました。
しかし、「これ!」というアイデアが思いつかず、結局、現在のように前線に準ずる形で表現されることになったということです。
でも、そのおかげ様で今の天気予報の解説が成立するのです。現在のような「梅雨前線」という用語・概念がなかったら、さぞかし複雑で長々とした解説になってしまうことでしょう
気象予報士さんは、梅雨前線という言葉は、あくまで便利で使いやすい表現になっただけであり、中身はもっと繊細で
複雑であることを忘れちゃいけないのですね
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